空き家の相談を受けていて筆者が痛感するのは、「もう少し早く動いていれば、選択肢がずっと多かったのに」というケースの多さです。
実家が空き家になってから考え始めるのと、なる前に準備しておくのとでは、取れる選択肢も、かかる負担も大きく違います。この記事では、親が元気なうちにできる「相続前の空き家対策」を、実務の優先順位で解説します。
| やっておきたいこと | ポイント |
|---|---|
| 名義の確認 | 登記事項証明書で確認。祖父母名義のままなら早めに対応(相続登記は義務化済み) |
| 権利関係・書類の確認 | 境界・接道・抵当権の状況、権利証や建築確認書類の保管場所 |
| 建物の状態の把握 | 雨漏り・傾き・シロアリの有無が、売る・貸す・住むの選択肢を左右 |
| 家族で方針を話す | 「どこでどう暮らしたいか」から入る。誰か住む可能性の有無だけでも共有を |
| 家財の整理 | 親が元気なうちに少しずつ。丸ごと業者依頼は数十万円かかることも |
| 税制の分かれ道の把握 | 存命中に売る(マイホーム特例)か相続後に売る(空き家特例)かで要件が変わる。事前の試算を |
| 判断能力低下への備え | 任意後見制度・家族信託は本人が元気なうちにしか契約できない |
なぜ「空き家になる前」の準備が重要なのか
理由はシンプルで、実家に関する意思決定は、親本人が元気なうちにしかできないことが多いからです。
- 実家を売る・貸す・残すの方針は、本来親の意思で決めるべきこと
- 権利関係や建物の情報を一番知っているのは親本人
- 認知症などで判断能力が低下すると、本人名義の不動産は原則売却できなくなる
特に3つ目は深刻です。施設入所の費用に充てるために実家を売りたくても、所有者本人の判断能力が失われていると売買契約が結べず、成年後見制度の利用が必要になるなど、手続きは一気に重くなります。
ステップ1:実家の「現状」を把握する
名義を確認する
意外に多いのが、実家の名義が亡くなった祖父母のままになっているケースです。登記が一世代前で止まっていると、いざ相続となったときに関係者が何倍にも増え、話し合いすら難しくなります。まずは法務局で登記事項証明書を取得し、土地・建物の名義を確認しましょう。なお、相続登記は2024年から義務化されています。過去の相続で登記が済んでいない場合は、早めの対応が必要です。義務化の内容は「相続登記はいつまでに?2024年義務化の内容と罰則をわかりやすく解説」で解説しています。
権利関係・書類を確認する
境界の確定状況、接道の状況、抵当権の有無、権利証(登記識別情報)や建築確認関係の書類の保管場所——これらは売却時に必ず必要になる情報です。親が元気なうちなら「あの書類はあの引き出し」で済む確認が、後になると家中を探すことになります。
建物の状態を把握する
雨漏りや傾き、シロアリ被害の有無など、建物の状態は将来の選択肢(売る・貸す・住む)を大きく左右します。帰省のタイミングで一度、家の中と外をひと通り見ておくだけでも価値があります。
ステップ2:家族で「実家をどうするか」を話す
最も重要で、最も難しいステップです。親にとって住み慣れた家の話は感情的になりやすく、子から切り出すと「追い出す気か」と受け取られてしまうこともあります。
実務でうまくいきやすいのは、「家をどうするか」ではなく「これからどこでどう暮らしたいか」から入る聞き方です。住まいの話は暮らしの話の一部として自然に出てきます。また、相続登記の義務化や空き家の税負担など「制度が変わった」という外部要因をきっかけにするのも、角が立ちにくい切り出し方です。
兄弟姉妹がいる場合は、誰かが住む可能性があるのか、いないのかだけでも早めに共有しておくと、その後の判断が格段に速くなります。実家を共有名義で相続することのリスクについては、「共有名義のまま相続するとどうなる?後悔しないために知っておきたいリスク」をご覧ください。
ステップ3:家財の整理を少しずつ始める
空き家の売却・活用で想像以上の負担になるのが、残された家財の処分です。丸ごと業者に依頼すれば数十万円かかることもあり、思い出の品の仕分けは時間も気力も消耗します。
親が元気なうちに、使っていない部屋から少しずつ整理を始めておくと、本人の意思で「残すもの」を選べるうえ、将来の負担が大きく減ります。生前整理は「亡くなる準備」ではなく「これからの暮らしを軽くする作業」として提案すると受け入れられやすいものです。
知っておきたい税制の分かれ道
実家を「いつ・誰が売るか」で、使える税制特例が変わります。細かい要件は個別確認が必要ですが、分かれ道があることだけは知っておいてください。
- 親が存命中に自宅として売る場合——マイホームの3,000万円特別控除の対象になり得ます。ただし住まなくなってから一定期間内の売却が要件のため、施設入所後に長く放置すると使えなくなります。
- 相続後に空き家として売る場合——空き家の3,000万円特別控除の対象になり得ますが、旧耐震(昭和56年5月以前建築)の建物であることなど要件が別に定められています。
つまり、「いずれ売るなら、親の施設入所のタイミングで売る方が有利」というケースもあれば、「相続後の空き家特例が使えるから急がなくてよい」というケースもあります。実家の建築年と家族の状況によって答えが変わるため、方針を決める前に一度試算しておくことをおすすめします。空き家特例の詳細は「空き家の3,000万円特別控除とは?適用要件とつまずきやすいポイント」で解説しています。
判断能力の低下に備える制度もある
「まだ元気だが、将来が心配」という場合には、本人の判断能力が低下した後も家族が財産管理や売却を行えるようにしておく制度として、任意後見制度や家族信託があります。いずれも本人が元気なうちにしか契約できません。導入には専門家(司法書士・弁護士等)の関与が必要ですので、実家の扱いに具体的な不安がある方は早めに相談してみてください。
まとめ:一番の対策は「話しておくこと」
相続前の空き家対策は、名義と書類の確認、家族での方針共有、家財の整理、税制の把握——どれも特別な手続きではなく、「早く始めるほど楽になる」ことばかりです。
そして何より効果が大きいのは、実家をどうするかを親子で話しておくことです。方針が共有されているだけで、いざというときの負担も、兄弟間の揉め事も大きく減ります。実家を「売る・貸す・住む」で迷ったときの判断軸は、「実家を売る・貸す・住む、どう選べばいい?鎌ケ谷市での判断ポイント」も参考にしてください。
鎌ケ谷市とその周辺のご実家について、「まだ空き家になっていないが、将来が気になる」段階でのご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。



